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三次元測定機コラム

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2024.10.23

2024.10.23

三次元測定機のプローブとは?種類や正しく使う方法を詳しく解説

INDEX目次

三次元測定機には「接触式」と「非接触式」のものがあり、接触式のものはプローブと呼ばれる接触子で直接触れて対象物の座標値を取得します。なお、三次元測定機(Coordinate Measuring Machine)は「CMM」とも呼ばれ、三次元の座標値を取得することで、対象物の寸法や立体形状を正確に測る測定機です。対象物に触れて座標値を取得するプローブには、さまざまな種類があります。CMMで正確に測定するには、対象物に適したプローブを選択することがなにより重要です。当記事では、CMMプローブの概要や種類、正しい使い方などを詳しく解説します。

三次元測定機のプローブとは?

接触式のCMMは、プローブと呼ばれる接触子を押し当てることで、対象物の座標値を取得する測定機です。プローブの先端には、スタイラスと呼ばれる針状の部品がついています。プローブに測定値を伝える役割を持っているため、スタイラスは精度が高く対象物に合ったものを選択するのが重要です。ここでは、CMMプローブとスタイラスについて詳しく解説します。

プローブは測定対象物に触れる接触子

CMMのプローブとは、測定対象物に触れる接触子を指します。冒頭でもお伝えしたとおり、接触式のCMMはプローブを押し当てることで、対象物の座標値を取得する測定機です。プローブは英語では「Probe」といい、日本語では「厳密な調査や精査」を意味します。測定機の分野では、測定対象に接触したり挿入したりする接触子を指すのが一般的です。接触式プローブのことをタッチプローブといい、三次元測定機に用いるものを区別してCMMプローブなどということもあります。

プローブに必要な性能

プローブの性能は測定精度に直結するため、CMMで正確に測定するには精度の高いプローブを使用するのが重要です。具体的には、下記のような性能を持ったプローブが求められます。

・対象物への負荷が小さい
・外来ノイズの影響を受けにくい
・測定機へ確実にデータを伝達できる
・扱いが容易

プローブは測定対象に直接触れるため、精度が高いだけでなく対象物への負荷が小さいことも重要です。また、外来ノイズは測定誤差に直結するため、なるべくノイズの影響を受けにくく、測定機へ確実にデータを伝達できる構造が求められます。さらに、測定の際に扱いやすかったり、摩耗や劣化が生じた際に交換しやすかったりすることも大切です。

スタイラスは測定値をプローブに伝える先端

タッチプローブの先端には、スタイラスと呼ばれる針状の部品がついています。ステムと呼ばれる軸に、合成ルビーなどで作られた先端球がついた構造です。スタイラスは英語で「Stylus」といい、日本語では「先の尖った棒状の筆記具」を意味します。スタイラスはいわば測定機と測定対象の仲介役ともいえる部品で、あらゆる測定に必要不可欠な要素です。座標値をプローブへ忠実に伝達する役割を持っており、対象物が最初に触れる接触ポイントでもあります。CMMで正確に測定するには、スタイラスの精度の高さがなにより重要です。

スタイラスの重要性

対象物との接触ポイントでもあるスタイラスは、測定の精度にかかわる非常に重要な部品です。正確な測定結果が得られるか否かは、接触ポイントでスタイラスの精度を維持できるかどうか、目的の測定箇所へ正確にタッチできるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。スタイラスの先端球が歪んでいたり、測定中にステムが過度にたわんでしまったりすると、簡単に測定誤差が生じてしまいます。高精度の測定を実現するには、要求に合った材質で、精度の高い部品によって構成されているスタイラスを選択することが重要です。最適なスタイラスは測定対象によって異なりますが、基本的にはステムの剛性が高く先端球の真球度も高いものが求められます。

三次元測定機プローブの種類

CMMプローブは、正確に測定できることがなにより重要です。対象物によって最適なプローブは異なるため、さまざまな種類が用意されています。CMMで精度を出すには、対象物や用途に合わせて最適なプローブを選択することが重要です。ここでは、CMMプローブの種類をご紹介します。

物理プローブ

「物理プローブ」は、対象物の表面に触れたりスキャンしたりすることで、座標値のデータを取得する接触子です。具体的には、物理プローブは以下の3種類に分類できます。

・タッチトリガープローブ
タッチトリガープローブは、スタイラスで対象物の表面に物理的に触れることで座標値のデータを取得し、測定機に送信するプローブです。検出部であるプローブと、接触ポイントであるスタイラスおよび指示機構部の2つの構造からなります。

・変位測定プローブ
変位測定プローブは、電気センサーによって対象物をスキャンし、取得した表面測定データを測定機に中継するプローブです。タッチトリガープローブは対象物に直接触れて測定するため、柔らかい物や変形しやすい物は正確に測れません。しかし、変位測定プローブは非接触で測定できるため、こういった対象物も正確に測ることが可能です。

・近接プローブ
近接プローブは、電気センサーではなくレーザーやビデオ技術によって表面測定データを取得し、測定機に中継するプローブです。変位測定プローブと同様、対象物に直接触れないため、タッチトリガープローブが苦手な柔らかい物や変形しやすい物も正確に測れます。

電流プローブ

「電流プローブ」は、CMMではなくオシロスコープと対象物を電気的に接続することで、電流を測定するプローブを指します。オシロスコープとは、電気信号の経時的変化を視覚的に観測する測定機です。オシロスコープでは電気信号を電圧波形として観測できますが、電流プローブはケーブルに流れる電流の磁束を捉えることで電圧に変換し、オシロスコープで観測できるようにします。検出部であるヘッドにケーブルを挟むだけで観測できるため、電流計のようにケーブルを切断することなく観測を続けることも可能です。稼働状態のまま電流を観測できることから、測定のために設備を停止する必要もありません。電流プローブには受動型と能動型があり、インバーターの電流測定やモーターの負荷電流、スイッチング電源の測定など、さまざまな用途に活用されています。

電圧プローブ

「電圧プローブ」も電流プローブと同様、オシロスコープと対象物を電気的に接続し、電圧を測定するプローブです。オシロスコープでは電圧プローブを通った電気信号のみ観測できるため、プローブの質が測定の精度に直結します。なお、電圧プローブも電流プローブと同様に、受動型と能動型に分類が可能です。受動型には「汎用受動プローブ」や「高電圧受動プローブ」、能動型には「アクティブ・プローブ」「差動プローブ」「高電圧差動プローブ」などがあります。接続すると少なからず回路動作に影響を及ぼすため、正確に測定するには最適なプローブを選択することが重要です。電圧を測る電圧プローブは、高電圧を扱う機器のメンテナンスやトラブルシューティングなど、さまざまな用途に活用されています。

特殊プローブ

「特殊プローブ」は、特定の対象物の測定に特化して設計されたプローブです。具体的には、内視鏡などに使用される光学的な手段を用いた「光プローブ」、デジタル回路の論理状態を解析する「ロジック・プローブ」、プリント基板における抵抗値のばらつきや瞬断を抑えるための「シュアーターンプローブ」、電子デバイス信号容量の増大に対応するための「ゼブラ型プローブ」などがあります。特定用途に合わせてさまざまな種類が開発されているため、用途に合ったものを選択することが重要です。

三次元測定機プローブを正しく使う方法

プローブは測定対象との接触ポイントでもあるため、使いこなしが測定精度を大きく左右します。CMMで正確に測定するには、プローブを正しく使うことがなにより重要です。ここでは、CMMプローブを正しく使う方法を解説します。

プローブのキャリブレーションを行う

CMMで精度を出すためには、キャリブレーションと呼ばれる較正作業を行う必要があります。キャリブレーションとは、機器の正常性を確認し、万が一誤差が生じていた場合は較正して正しく測定できるよう調整する作業です。具体的には、スタイラスを登録し、CMMに先端球の直径を設定します。スタイラスにはさまざまな種類があり、たとえ同じ種類であってもわずかな個体差があったり、経年劣化や摩耗で誤差が生じたりする可能性もあるため、測定する度に必ず行わなければなりません。先端球の直径を設定することで、対象物に触れる点から先端球の中心座標までの半径を考慮した測定を行うことが可能です。

プローブのキャリブレーションを行う

三次元測定機と測定対象の接続はなるべく短くする

正確に測定するには、CMMと測定対象の間の接続をなるべく短くしましょう。なぜなら、スタイラスが長ければ長いほど、測定誤差が生じやすくなるからです。できるだけ短く、剛性の高いスタイラスを選択してください。また、測定機とプローブを接続するケーブルも、なるべく短くするのが理想です。ケーブルが長いと外来ノイズの影響を受けやすくなり、測定誤差に直結します。最短距離での接続を意識し、不必要に長いケーブルは使わないようにしましょう。

プローブは定期的に交換する

プローブは消耗品です。CMMの精度を維持するには、定期的に交換しましょう。スタイラスの先端球は、合成ルビーやセラミック、ジルコニア、超硬合金など硬度の高い素材で作られています。しかし、継続的な使用で摩耗したり対象物の表面素材が凝着したりするため、定期的な交換が必要です。接触ポイントでもあるスタイラスの先端球が変形していると、正確に測定できません。正確に測定するには、使用期間を決めて定期的に交換することが重要です。

適切なスタイラスを選択する

CMMで最大限の精度を得るには、適切なスタイラスを選択することも重要です。前提として、対象物に合っていなかったり、精度が悪かったりすると、測定誤差に直結します。測定中に曲がったりたわんだりしないよう、剛性が高くできるだけ短いものを選択しましょう。また、接続部品が多くなればなるほど、精度が悪くなります。エクステンション接続などは曲がりやたわみにつながるため、なるべく少ない部品点数で接続してください。さらに、先端球とステムのクリアランスを大きくすると軸部で測定してしまう可能性が低下するため、先端球の直径がなるべく大きいものを選択しましょう。

三次元測定機プローブで正しく測定できない原因

前章でもお伝えしたとおり、プローブの使いこなしはCMMの精度を大きく左右します。精度の高いCMMで思うような測定結果を得られない場合は、プローブを正しく使用できていないかもしれません。ここでは、CMMプローブで正しく測定できない原因について解説します。

プローブが正しくキャリブレーションできていない

接触式のCMMを使用する場合は、プローブのキャリブレーションが必要です。精度の高いCMMで思うような測定結果が得られない場合は、スタイラスの登録がうまくいっていないかもしれません。例えば、複数人でCMMを使用する場合、別の測定者が異なる対象物に適したスタイラスを登録している可能性があります。また、経年劣化や摩耗によって、登録時と先端球の状態が変化している可能性もあるでしょう。スタイラスの登録が適切ではないまま使用してしまうと、正しく測定できません。CMMを使用する場合は、必ず毎回キャリブレーションを行いましょう。

プローブが正しくキャリブレーションできていない

プローブが測定対象に合っていない

キャリブレーションを行っても正しく測定できない場合は、プローブが測定対象に合っていない可能性があります。例えば、タッチトリガープローブは対象物に直接触れて測定するため、柔らかい物や変形しやすい物は正しく測定できません。一方、レーザーで測る近接プローブであれば対象物に接触しないため、こういった対象物も正確に測定できます。しかし、黒い物や透明な物、鏡のように光沢のある物など、レーザーを吸収したり反射したりする対象物は正確に測れません。種類によって得意不得意が異なるため、測定対象に合ったものを選択することが重要です。

測定環境が適切ではない

適切なプローブを選択しキャリブレーションを行っても測定誤差が生じる場合は、測定環境が適切ではない可能性があります。例えば、一般的なCMMは、温度変化や振動の影響を受けやすいため注意が必要です。熱膨張や振動の影響を最小限に抑えるには、事前に対象物を地盤のしっかりとした専用の測定室に安置し、温度や湿度を一定に保ってください。安置時間は最低5時間以上、最適な温度は20℃前後と言われています。その他にも、測定室内の粉塵やオイルミストも測定誤差につながるため、気をつけましょう。可動部の多いCMMの場合は、定期的な清掃や注油も必要です。

測定方法が適切ではない

それでもなお期待したような精度が出ない場合は、測定方法が適切ではない可能性もあります。一般的なCMMの使用方法は、下記のとおりです。

1. 環境整備
2. キャリブレーション
3. アライメント
4. 座標系設定
5. 測定

例えば、キャリブレーションでスタイラスの登録が正しくないと、簡単に測定精度は悪化します。また、座標系設定で基準面を適切に作成できないと、正しく測れません。CMMを導入すれば、誰でもすぐに高精度の測定ができると思われがちです。しかし、CMMを高精度に使いこなすには、一定のスキルやノウハウが求められます。測定者を育成するため、操作スキルを身に付けるトレーニングを実施することも重要です。

まとめ

今回は三次元測定機のプローブについて解説しました。プローブおよびスタイラスは対象物との接触ポイントでもあるため、測定精度にかかわる大切な部品です。プローブは、測定対象に合わせてさまざまな種類が用意されています。精度を出すには、対象物や用途に合わせて最適なものを選択することが重要です。当記事を参考に正しくプローブを使用し、精度の高い測定を実現しましょう。

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