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三次元測定機コラム

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2024.08.26

2024.08.26

非接触三次元測定機とは?種類やメリット・デメリットを詳しく解説

INDEX目次

三次元測定機とは、三次元の座標値を取得し対象物の寸法や立体形状を測る測定機です。従来のハンドツールでは難しい複雑な形状の物も正確に測れるため、自動車部品や航空部品といった超精密加工には欠かすことのできないツールとなっています。三次元測定機は測定原理に応じて「接触式」と「非接触式」のものがあり、用途に合わせて使い分けることが重要です。当記事では、非接触三次元測定機の種類やメリット・デメリットについて詳しく解説します。

非接触三次元測定機とは?

冒頭でも述べたとおり、三次元測定機とは三次元座標値を取得し、対象物の寸法や立体形状を測る測定機です。複雑な形状の物も正確に測定できるため、超精密加工や品質管理の分野では欠かせません。ここでは、非接触三次元測定機の概要と主な活用シーン、ニーズが高まっている背景などを解説します。

レーザーや光で対象物の三次元座標を読み取る測定機

非接触三次元測定機とは、レーザーや光を照射し対象物の三次元座標を読み取る測定機です。レーザーや光を照射することで一度に広範囲を測定できるため、複雑な対象物も効率よく測定できます。従来の三次元測定機とは異なり対象物に触れないため、柔らかいものや変形しやすい物の測定も可能です。接触式の三次元測定機が苦手な曲面の多い物や、複雑過ぎる対象物の測定にも向いています。部品や製品の立体形状をそのままデータ化できるため、設計時の3D CADと比較して製造誤差を数値化することも可能です。なお、三次元測定機の歴史についてはこちらの記事をご参照ください。

「非接触式」と「接触式」の違い

三次元測定機は、測定原理に応じて「非接触式」と「接触式」に分類できます。「非接触式」は前述の通り、レーザーやパターン光を照射して対象物の寸法や立体形状を測る測定機です。レーザーや光によって「面」で測定するため効率がよく、大きく複雑な物も素早く測定できます。一方「接触式」は、プローブと呼ばれる接触子を押し当てることで対象物の寸法や立体形状を測る測定機です。対象物に直接触れて「点」で測定するため精度が高い反面、ゴムのように柔らかい物や薄い板のような変形しやすい対象物は正確に測定できません。なお、三次元測定機の測定原理についてはこちらの記事をご参照ください。

非接触三次元測定機の主な活用シーン

非接触三次元測定機は、自動車業界や航空機業界、家電業界などで積極的に活用されています。自動車業界では、複雑な形状の骨格部品やエンジン部品、曲線が多用された外装部品・エクステリアパーツや内装部品・インテリアパーツ、近年需要が高まるEVの電気制御部品などへの応用が活発です。航空機業界では、超大型のボディやエンジン部品の測定に使用されています。接触式の三次元測定機では困難な翼形状の全体測定も可能となり、従来では難しかった不具合の早期発見や、再設計による燃費向上も可能となりました。家電業界では、既存部品や標準部品の立体形状を正確に測り試作品を作成することで、設計工数を大幅に削減するリバースエンジニアリングへの活用も見られます。なお、三次元測定機でできることについてはこちらの記事をご参照ください。

非接触三次元測定機のニーズが高まっている背景

接触式の三次元測定機は対象物に直接触れて測定するため、超複雑形状の対象物は測定が難しく、プローブを押し当てる際に測定痕が残ってしまうという問題がありました。一方、レーザーや光を照射して測定する非接触三次元測定機であれば、複雑な形状の対象物も効率よく測定できます。対象物に触れないため、測定痕が残ることもありません。近年では、測定対象は小さく、精度も厳しくなってきていることから、わずかな傷も許されないようなケースも増えてきています。また、プローブが入り込めないような精密な対象物も増えていることから、対象物に触れることなく測定できる非接触三次元測定機のニーズが高まっているのです。

非接触三次元測定機の種類

三次元測定機には「接触式」と「非接触式」のものがあり、従来は接触式が主流でしたが近年は非接触式のニーズも高まっています。非接触三次元測定機にもさまざまな種類のものがあり、用途に合わせて使い分けることが重要です。ここでは、非接触三次元測定機の種類をご紹介します。なお、接触式の種類と特徴についてはこちらの記事をご参照ください。

3Dレーザースキャナー・3Dスキャナー

3Dレーザースキャナー・3Dスキャナー

「3Dレーザースキャナー・3Dスキャナー」は、対象物にレーザーを照射し立体物や建造物の形状を3Dデータとして読み取る測定機です。3Dレーザースキャナー・3Dスキャナーには、据え置きタイプのものとハンディタイプのものがあります。据え置きタイプは定点測定に適しており、ある程度精度も高い反面、位置や角度を変えられないのが欠点です。一方、ハンディタイプは狭い場所や立体物の裏側でも測定できるなど、小回りが利く反面、精度は据え置きタイプに劣るという欠点があります。3Dレーザースキャナー・3Dスキャナーは基本的に、精度より効率を重視した測定に用いるのが一般的です。対象物を効率よく3Dデータ化できるメリットから、製造業や建築業、土木業、アパレル業、品質管理、考古学など、さまざまな分野で活用されています。

アーム型

「アーム型」は、人間の腕のような、複数の関節を備えたアームによって、対象物の三次元形状を測る測定機です。多関節のアームは可動域が広いため、複雑な形状の物も効率よく測定できます。従来の三次元測定機より小型軽量のものも多く、運搬や設置がしやすいのも特徴です。従来は接触式が主流でしたが、近年は接触式にも非接触式にも対応できるモデルも増えています。測定の自由度が高く大きな対象物も効率よく測れる反面、機械的構造により測定精度には懸念が残るため、精度を重視する場合は注意が必要です。また、測定範囲はアームが届く範囲に限られるという欠点もあります。

マルチセンサー測定器

「マルチセンサー測定器」は、一つの筐体に接触式タッチプローブと非接触式レーザーの両方を搭載した測定機です。接触式と非接触式の特徴を併せ持っており、超複雑な物や従来の測定機では難しかった対象物も正確に測定できます。部品の寸法や位置関係、輪郭形状、幾何公差などを測るのが得意で、測定精度の向上、複雑形状の測定・評価、測定時間の短縮などが主なメリットです。精度の高さから、精密部品や電子部品、医療部品、自動車部品など、厳しい公差適合が求められる分野で活用されています。

CT

「CT」は「Computed Tomography」の頭文字を取った略語で、日本語では「コンピュータ断層撮影」などと訳されます。病院の医療用CTをイメージするとわかりやすいかもしれません。測定の原理は医療用CTも工業用CTも基本的に同じで、X線などの放射線を照射することで対象物の内部構造をデータ化する測定機です。対象物の内部構造を非破壊で観察できるメリットがあり、製造業でも積極的に活用されています。従来の工業用CTは、欠陥や介在物の有無を検査する用途に利用されてきました。しかし近年では、欠陥の有無だけでなく寸法や体積の評価、従来は難しかった対象物の測定などにも活用できる工業計測用CTも増えてきています。

非接触三次元測定機のメリット

超複雑な形状の物も正確に測れる三次元測定機は、万能な測定機とも言われています。製造工程が高度化している現代では、厳しい公差適合に対応するため三次元測定機は欠かせません。ここでは、非接触三次元測定機のメリットを解説します。

大型で複雑な対象物も測定できる

三次元測定機は、従来のハンドツールでは難しかった大型で複雑な対象物も正確に測定できます。特に、レーザーや光を照射し対象物の立体形状を測定する非接触式は、大型の物や複雑な物の測定が得意です。従来の測定機では難しい大型の複雑形状も正確に測定・評価できるため、自動車部品や航空部品といった巨大な精密部品の加工製造には欠かせません。しかも、従来の測定機は専用の測定室に設置して使う据え置きタイプが主流でしたが、比較的小型軽量な非接触式はハンディタイプのものも増えてきています。自由に持ち運んで使用できるため、製造業だけでなく建築業や土木業、考古学などへの活用も盛んです。

測定の手間を大幅に削減できる

三次元測定機は、ノギスやマイクロメーターといった従来のハンドツールとは比べ物にならないほど効率的に測定できます。ただし、正確に測ろうとすると事前に地盤のしっかりとした専用の測定室に対象物を安置し、温度と湿度を一定に保たなければなりません。なぜなら、精度を出すためには振動や熱膨張の影響を極力排除する必要があるからです。しかし、一旦測定環境さえ整ってしまえば、後は自動で測定できるモデルも増えてきています。測定の手順をプログラム化した測定プログラムを作成することで、同一品種大量生産における測定を自動化することも可能です。なお、測定プログラムについて詳しくはこちらの記事をご参照ください。

接触式より測定のスピードが速い

接触式より測定のスピードが速い

非接触式はレーザーや光を照射し広範囲を一度に測るため、効率よく測定できます。接触式は直接触れて測定するため、複雑過ぎる対象物は膨大な測定時間がかかるという問題がありました。プローブを押し当て「点」で測る接触式に対し、非接触式はレーザーや光によって「面」で測るため、測定のスピードが速いというメリットがあります。さらに、接触式は測定の度にプローブのキャリブレーションが必要でしたが、非接触式は必要ありません。キャリブレーションとは機器の正常性を確認し、接触子の摩耗などで誤差が生じていた場合は修正して、正しく測定できるよう較正する作業です。そもそもプローブのない非接触式は摩耗することもないため、設置してすぐに測定を開始できます。

対象物を傷付けず何度も測定できる

「非接触三次元測定機のニーズが高まっている背景」でもご説明したとおり、接触式は対象物にプローブを押し当てて測定するため、測定痕が残ってしまうこともあるという問題がありました。一方、非接触式は対象物に触れないため、測定痕が残ってしまうこともありません。精度が厳しく極わずかな傷も許されない対象物も増えてきていることから、傷を付けることなく測定できるのは非接触式の大きなメリットです。さらに、接触式は異なる対象物を測定する場合や別の基準面を測定する場合は毎回キャリブレーションしなければなりません。非接触式であれば、一度設置すれば何度でも同じ条件で測定できます。

非接触三次元測定機のデメリット

非接触式は接触式では難しい超複雑形状も効率よく測れる、対象物を傷つけることなく何度も測定できるといったメリットがあります。しかし、次世代の万能な測定機とも言える非接触式には、いくつかのデメリットがあるのも事実です。ここでは、非接触三次元測定機のデメリットを解説します。

導入やメンテナンスにコストがかかる

導入やメンテナンスにコストがかかる

従来の測定機では難しかった対象物も正確に測定できることから、三次元測定機は万能な測定機とも言われています。しかし、高機能・高精度故に、導入やメンテナンスには膨大なコストが必要です。小型軽量で持ち運べるハンディタイプのものは数百万円程度で導入できますが、高機能・高精度で大型の据え置きタイプは数千万円以上するものも珍しくありません。また、大型のモデルは広い設置場所が必要となるため、スペースを確保するにもコストが必要です。さらに、精密機器でもある三次元測定機は、定期的なメンテナンスが欠かせません。可動部の多い接触式ほどではありませんが、非接触式のモデルであっても一定のメンテナンスコストを考慮しておく必要があります。

接触式より測定の精度が低い

非接触式は、接触式より測定の精度が低いのもデメリットです。レーザーや光を照射することで効率よく測れる非接触式は、対象物に直接触れて測定する接触式に精度は及びません。基本的に、測定精度と測定時間はバーターの関係です。比較的精度の高い接触式は1μm程度、非接触式は10μm程度の精度と言われています。そのため、幾何公差でマイクロオーダーの精度が求められる測定に非接触式は向いていません。ただし、近年では非接触式でも接触式に匹敵するような高精度のモデルも増えつつあります。効率よく高精度で測定したい場合は、なるべく最新のモデルを導入するのがおすすめです。非接触三次元測定機を導入する際は、求める測定精度と許容できる測定時間を考慮しモデルを選択しましょう。

測定できない対象物もある

万能な測定機とも言われている三次元測定機には、測定できない対象物もあります。「非接触式と接触式の違い」でもご説明したとおり、対象物に直接触れて測定する接触式は、ゴムのように柔らかい物や薄い板のように変形しやすいものは正確に測定できません。一方、レーザーや光で測る非接触式であれば、柔らかい物や薄い物も測定できます。しかし、黒い物や透明の物、鏡のように光沢のある物は、レーザーや光を吸収したり反射したりしてしまうため、正確に測定できません。三次元測定機には向き不向きがあり、対象物によって最適なモデルを使い分けることが重要です。

一部の対象物は前処理が必要

繰り返しになりますが、レーザーや光で測定する非接触式は、黒い物や透明の物、鏡のように光沢のある物は正確に測れません。このような対象物を非接触式で正確に測るには、前処理が必要です。具体的には、専用のパウダースプレーを塗布し対象物の表面に極薄の白膜を作ることで、レーザーや光を吸収したり反射したりしないようにします。前処理の有無で測定精度は大幅に異なるため、非接触式で正確に測定するには前処理が欠かせません。ただし、少量多品種生産でサンプルを破棄できない場合や、わずかな汚損も許されないような場合は使用しない方がよいでしょう。また、専用のパウダースプレーを購入する費用も、ランニングコストとして考慮しておく必要があります。

まとめ

今回は非接触三次元測定機について解説しました。三次元測定機には「非接触式」と「接触式」のものがあり、非接触式はレーザーや光を照射することで対象物の三次元座標を読み取る測定機です。接触式では難しい複雑な対象物も効率よく測定できる反面、測定精度は対象物に直接触れて測定する接触式に及びません。三次元測定機には向き不向きがあるため、対象物によって適したモデルを使い分けることが重要です。

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