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2024.09.06
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三次元測定機とは、光やレーザーを照射したり、接触子で触れたりすることで座標値を取得し、対象物の寸法や立体形状を測る測定機です。英語では「Coordinate Measuring Machine」といい、略して「CMM」と呼ぶ場合もあります。CMMは精密機器でもあるため、定期的な校正作業が欠かせません。なぜなら、機械はどんなものであっても、長期間使用していると部品が劣化したり破損したりするからです。誤差が生じたまま使用を続けると製品の品質が低下し、企業の信頼が損なわれる結果にもなりかねません。そこで、当記事ではCMMの校正が必要な理由や、校正の方法を詳しく解説します。
CMMは精密機器でもあるため、精度を維持するには定期的な校正作業が必要です。まずは、CMMの校正について、概要を整理しておきましょう。
CMMの校正とは、機器の精度・機能・動作などのステータスを検証し、調整する作業のことです。精密機器でもあるCMMを長く使用していると、部品の劣化や故障が発生するリスクも高まります。正しく測定できない状態で使用し続けると、製品の品質を保つことができません。そのような事態を防いで高精度の測定を持続して行うためには、CMMの校正を定期的に実施することが大切です。定期的に校正作業を実施することで、測定機器は信頼性を確保できます。
CMMの校正を行う理由を端的に言うと、校正作業によって製品の品質を間接的に立証するためです。例えば、定期的に校正作業を実施すれば、その期間はCMMの状態を類推できます。前回のデータと今回のデータを比較することで、一定期間遡ってCMMの状態を推定することが可能です。また、校正によるデータを分析することで、CMMが一定の基準を満たしているかどうかを確認できます。つまり、定期的な校正作業によって、ある一定期間、適切な精度・動作・機能を維持していたことを証明することが可能です。
CMMの校正について、概要を整理しました。続いては、CMMの校正作業を実施するメリットについて解説します。
定期的に校正作業を実施することで、CMMの測定精度を維持できます。校正を実施すれば測定誤差を定量化できるため、原因を分析することも可能です。必要に応じて測定機を調整すれば、CMMの測定精度を改善・向上できるため、より信頼性の高い測定結果を得られます。測定結果の信頼性の高さは、製品の品質管理や検査において非常に重要です。正しく校正された測定機で測定したデータは、製品の品質を証明する重要な証拠となります。
しかるべき方法で校正した測定機は、校正証明書が発行されます。校正証明書とは、測定機の正常性を試験する校正作業を実施したことを証明する書類で、測定結果が国家標準や国際基準にトレーサブルであることを校正した業者が宣言する文書です。日本国内の測定機メーカーは一般的に、「校正証明書」「試験成績書」「トレーサビリティ証明書」の3点を発行します。ISO9001またはISO/IEC17025に則って発行される校正証明書は、例えば品質マネジメントシステムであるISO9001の社内規定を定める場合などに留意が必要です。
定期的にCMMの校正作業を実施し続けることで、企業の信頼性向上にもつながります。CMMは精密機器でもあるため、長く使用していると部品の劣化や故障が発生するリスクが高まります。例えば、対象物に直接触れて測定する接触式CMMの場合は、接触子が摩耗するため定期的に交換しなければなりません。接触子が摩耗したり変形したりした状態で測定すると、正しい測定結果が得られないため注意が必要です。正しく測定できない状態でCMMを使用していると、製品の品質は保てません。製品および企業の信頼性を向上するには、定期的な校正作業が必要です。
CMMの校正は、トラブルの防止にも効果があります。校正作業を定期的に実施すれば、CMMの潜在的な問題を発見することも可能です。問題を早期に発見して対策を実施できれば、突然の故障による生産ラインの停止や不良品の発生などのトラブルを防げます。例えば、先ほども述べたとおり接触式CMMは接触子が摩耗するため、定期的に交換しなければなりません。
また、アーム型のように可動部の多いCMMの場合は、可動部分の清掃や注油も欠かせません。トラブルを防止し、精度を維持するには、温度変化や湿度変化、オイルミスト、粉塵といった現場で想定される環境変動からCMMを保護することも重要です。これは、生産性の向上やコスト削減につながります。
測定精度を維持し、トラブルを防止し、信頼性を向上するには、定期的な校正作業が欠かせません。ここからは、CMMの校正方法について解説します。
社内校正は、自社内で測定機の校正を実施する方法です。例えば、ノギスやマイクロメーターといった単純なハンドツールであれば、校正にそこまで手間はかかりません。ただし、測定機を社内校正するには、基準となる標準器が必要です。標準器とは国家当局が国家や経済圏で使用を認めた測定標準で、国家計量標準に則っています。測定機の正常性を判断するには基準となる標準が必要であり、正確な標準と比較することで証明することが可能です。
社外校正は引き取り校正ともいい、校正対象の測定機を社外のJCSS登録校正事業者に送付し、校正を依頼する方法です。JCSSとは「Japan Calibration Service System」の略で、JCSS登録校正事業者とは計量法に基づく計量法トレーサビリティ制度の適合性認定を受けた登録事業者を指します。標準検査規格に基づくJIS検査を受けられるため、校正証明書を発行してもらうことも可能です。ステップゲージやブロックゲージ、ダイヤルゲージといった基準ゲージの校正に向いています。
出張校正はJCSS登録校正事業者に依頼して専門の校正担当者の派遣を受け、測定機のある社内で校正作業を実施してもらう方法です。現地で校正を実施してもらえるため、CMMのような大型の測定機も測定室に据え置いたままで校正できます。また、引き取り校正のように、輸送時の影響やリードタイムを考慮する必要もありません。引き取り校正と同様、JIS検査を受けて校正証明書の発行を受けることも可能です。一定のコストはかかりますが、据え置き型のCMMや校正対象が多い場合は、社内で校正してもらえる出張校正を依頼するとよいでしょう。
なるべくコストを抑えて校正するには社内校正という方法もあります。しかし、専門家の手による正確な校正を実施するなら、社外の校正事業者に依頼するのも一つの方法です。ここでは、校正事業者選びで失敗しないためのポイントについて解説します。
まずは、校正事業者およびCMMの校正能力を確認しましょう。CMMは、国内外のメーカーからさまざまなタイプの製品が登場しています。そのため、同じCMMの校正事業者といっても、得意としている機器が異なるケースも少なくありません。高い校正精度を実現できて、必要な校正項目をすべて実施できる校正事業者を選ぶだけでなく、使用しているCMMの機種に専門性があるかどうかも必ずチェックしましょう。自社で使っている大切なCMMの校正作業を任せるための根拠としては、実際の事例やお客さまの体験談を確認しておくと安心できます。
校正能力以外にも、CMMの校正経験が豊富で信頼できる校正事業者を選定しましょう。CMMの校正は、製品の品質にも大きく影響する重要な作業です。外部の業者に校正作業を依頼する際には、比較検討を行なって信頼性を見極めましょう。具体的な比較ポイントとしては、過去にどのような企業に対し校正作業を提供したことがあるかを確認してください。また、ISO9001やISO/IEC17025などの認定の有無も、信頼性を判断できる材料です。ほかにも、事例や口コミなどの記載がある場合には、内容を確認して顧客満足度の高い校正事業者を選びましょう。
校正能力と信頼性の次は、CMMの校正に必要な費用を比較しましょう。校正作業に必要な料金は、校正事業者によって異なります。金額の妥当性を判断するためにも、複数の校正事業者から相見積もりを取って、比較検討してください。校正事業者ごとの費用の主な内訳には、校正の基本料金以外にも、出張費やオプションサービス料などが加算されるケースも一般的です。加えて、時間外の校正作業を希望する場合にも割増料金が設定されている校正事業者が目立つため、ラインが停止している休日に校正を依頼したい場合は事前に確認しておきましょう。
コストの比較と合わせて、校正事業者ごとのサービス内容を確認しましょう。まず前提として、校正事業者によって対応しているCMMの製品が異なります。自社で使用しているCMMによって対応している校正事業者は異なるため、当該CMMの校正が可能であるかを最初に確認してください。次に、校正事業者によっては、オプションサービスを設定している場合もあります。例えば、追加料金を支払うことで、スキャニング測定やマルチスタイラス測定などを実施してもらうことも可能です。CMMの校正で必要な項目を明確にして、自社にとって最適な校正事業者を選定しましょう。
今回は三次元測定機の校正について解説しました。CMMにおける校正とは、機器の精度・機能・動作などのステータスを検証し、測定機の正常性を確認する作業です。標準と比較し誤差を確認する作業でもあるため、厳密にいうと精度を改善したり向上したりするメンテナンスの作業は含まれません。
精度を維持し製品の品質を保つには、定期的な校正作業が非常に重要です。CMMの校正は標準器を使って社内で実施することもできますが、社外の校正事業者に依頼する方法もあります。当記事を参考に、定期的な校正作業を必ず実施しましょう。